浴室

僕は浴室が嫌いだ。

憂鬱な気分になるからだ。

 

僕は病んでいる。

ただでさえ病んでいるのに、風呂に入るとより落ち込む。

 

 

なんでだろう?と今日考えた。

きっとこの冷たい窓もないタイルに囲まれた空間に一人きりになるのが怖いのだろう。

一人で考えてしまう時間ができてしまうからだろう。

湯船は温かいのに、とても悲しい気持ちになる。

風呂につかれば気持ちいいはずなのに。

心身が癒やされるはずなのに。

 

 

孤独には慣れているつもりだ。

でも孤独は嫌だ。

僕はとても耐えられない。

発狂しそうなくらい孤独が嫌いだ。

誰かにいてほしい。

それにしては人間のことを信用していない。

変わったやつなのかもしれない。

でも僕はずっと一人でいると頭がおかしくなりそうだ。

だからこの浴室という空間が怖い。

無理矢理一人になるからだ。

 

 

「風呂には毎日入る。」

「日本人だから。」

「日本人は毎日風呂に入る習慣がある。」

「日本人は清潔だ。」

 

 

風呂に入るとミッションがある。

体を洗うことだ。

浴室にいるとただでさえ憂鬱な気分になるのに、このミッションをクリアしなくてはならない。

頭を洗ってシャワーを浴びているときはいつも何かを考えているので記憶がない。

だからシャンプーを2回してしまったりする。

このミッションは僕にとっては大きな労力だ。

風呂を上がって体を拭いて、ドライヤーして、化粧水塗ってと、考えただけでストレスだ。

孤独なことがストレスなのに。

 

 

家族が全員いなくなって、たった一人ぼっちで暮らすことになって、こうして浴室で体を洗っている未来を考えると胸が苦しくて呼吸ができなくなった。

僕は孤独が嫌いだ。

考える時間ができてしまうからだ。

 

 

誰だって浴室には一人でいるだろう?

親と一緒に風呂に入るのは小学生までだろうし、女の人と入る人もいるかもしれない。

でも基本は一人でシャワーを浴びるという行為をほぼ毎日淡々とこなすのだろう。

みんなはどう思っているのだろう?

一人でいることになんの恐怖も感じないのだろうか?

 

 

誰かと風呂に入りたいという話ではない。

僕は裸を人に見られるのがとても嫌だ。

だから誰とも一緒に風呂に入ろうとは思わない。

 

 

どこかの女に心が病んだときは湯船につかってリラックスしたほうがいいと言われた。

考える時間ができてしまっただけで、より病んだ。

リラックスなんて全然しなかった。

胸が苦しくなった。

一般的なリラックス法も変わり者の僕には効果がないのかもしれない。

 

 

一人でいたいのか一人が怖いのか自分にもよく分からない。

そういう人は多いのかもしれないけど、大概は、

一人でいたい時に一人になりたい。

一人が怖い時に誰かといたい。

という身勝手な理由だろう。

僕もたぶんその身勝手な理由なのかもしれない。

 

 

これから死ぬまで続くであろう浴室に行って体を清潔にするという作業と僕はどう向き合えばいいだろう。

僕は小難しいとよく言われる。

他の同級生がなにも感じない「浴室」というテーマだけで話がこれほどできるからだ。

小難しい話はもうやめよう。

夜は無駄なことを考え込んでしまう。

YouTubeでバカ動画を見て寝ることにする。

おやすみなさい。

 

 

孤独が嫌な理由。

知りたいよね。

人間は皆孤独なのに。